第5章 流星群が誘う旅
「じゃあお休みなさい」
あまねが椿油をつけて梳かしてくれたひなたの髪は、艶々で煌きを放つほどに美しくなった。
あまねもいつも手入れをしている賜物か、髪の艶も申し分なく美しい。二人が並ぶと、姉妹のようだ。
「ひなた、よく寝るのよ。ゆっくり起きてきなさい」
襖を開けて部屋を出る時、あまねはそう言ってから襖を閉めた。
「はい。お休みなさい」
今は夜の9時を過ぎたくらいだ。子供達は皆寝ている。現代っ子のひなたは、この時間に寝る事には慣れていなくて、まだ目が冴えている。お布団には入らずに部屋の襖を開けた。
美しい月夜の晩だった。ひなたの部屋はお庭には面してなくて、奥の裏庭が綺麗に見える場所にある。月に照らされた庭の木々と、静かな空気感。
とても癒される景色だ。産屋敷邸はお昼にいたお手伝いの人達が夕方には帰るので、そこからは家族だけになる。
とても静かだ。ひなたは月を見上げた。
「煉獄さん、今何をしているのかな。特別な任務があるって言っていたけど、任務は無事に終わったのかなあ」
数日前に会った時、煉獄さんはそう言っていた。
「元の時代に戻る前に、また煉獄さんに会えるかな。鬼殺隊祭にはきっと来るよね、隊士だもの」
煉獄さんの笑った顔が思い出されてきた。
「軟膏、きちんと塗ってるかな」
よく効くんだから塗って欲しいな。自分が大正時代の人の怪我の具合をリアルタイムで気にしているだなんて。
同じような夜でも、この夜はひなたの暮らす現代の夜ではなく、大正時代の夜なのだ。
大きな時間の流れを遡り、この場所で夜を迎えている。
考えれば考えるほど、不思議で不可解な出来事に感じる。
「おやすみなさい」
この時代で出会った人と、綺麗なお月様に呟くと襖を閉めた。