第1章 吉兆を告げる白梅
「父は、お館様と、お相手の方とをお引き合わせする場にいてな…。お前にはまだ分からんだろうが…」
杏寿郎に話してやりたいが、どの程度まで話せばよいか、戸惑ってしまった。
「父上、お二人はご夫婦になられるのですか? 」
「そう、だな…むぅ…。父が見たところ、お二人は気が合われたようだ」
杏寿郎が夫婦という定義を理解しているか、少々謎ではあったが、きっと分かっているのだろう。槇寿郎と瑠火の生活を幼いなりに見てきた杏寿郎だ。
槇寿郎は、息子が嬉しそうな顔になったのに気がついた。
「父上」
「…ん? 」
杏寿郎は僅かに頬を蒸気させている。槇寿郎は手を止めて、そんな息子の顔を見やった。
「お館様と、お相手の御方が、もしもご結婚されたなら、お館様にお子がお産まれになるのですか? 」
「…ん?まぁ、そうなるだろう、な」
槇寿郎の胸はドキリとした。息子は、まさか子供の作り方まで知っているのか。
…毎日、熱心に書物を読み耽っているし、大人とも話をしている杏寿郎が、どこか槇寿郎の知らないところで子作り知識を仕入れてきているのではあるまいか…。
そんな父の心配をよそに、杏寿郎の表情は明るい。
「父上!お館様の所にも、千寿郎のように可愛いお子様がお生まれになればいいですね! 」
「え?…そうだな」
槇寿郎はほっと胸を撫で下ろした。息子は、ただ弟が可愛いから、幼子のいる幸せをお館様にも味わって欲しいと思っているだけなのだと。
早熟ではなく、純粋な杏寿郎の気持ちが伝わると、今度は胸が切なくなった。
「…千寿郎は可愛いか」
お膳を持ち、茶の間に運ぼうとしている杏寿郎に聞いてみた。