第5章 流星群が誘う旅
「そうだ、部屋に戻らなきゃ!ひなきちゃんとにちかちゃんが来るかも! 」
部屋を抜け出している事がバレてしまってはまずい。小走りで屋敷に戻ろうとしても敷地が広く時間がかかる。
急ぐあまり玉砂利の音にまで気をまわす事ができなかった。足音を響かせて急いでいたひなたの後ろ、数メートル離れた所でジャリっと誰かが玉砂利を踏んだ。
「誰だァ?そこにいる奴」
背後から鋭く響く声にドキリとして動きが止まる。声だけで威圧できる威力…
この声はさっきの…。
「不死川さんっ!! 」
「ア”ァっ⁉︎ 」
ドスの効いた声が響く。不死川さんはズカズカと物凄い早足で歩いて来た。
「おい、お前。何故に俺の名前を知ってる⁈ 」
ぐいっと接近され、顔が近くなった。その途端、不死川さんはひなたから離れて頭を下げた。
「…失礼致しました。あまね様とは気が付かずに、無礼をお許しください」
不死川さんはそれまでの猛っていた勢いから、全く別人のような振る舞いに変わって紳士的な言葉遣いになった。
「私だよ。ひなただよ、不死川さんもこっちに来たの? 」
不死川さんに会えた嬉しさを溢れさせて言うと、不死川さんはポカンとした。
「誰…? 」
不死川さん、こっちの世界に来て記憶を無くしちゃったのかな。そう言えば、不死川さん凄く綺麗な顔していたのに、顔に傷痕まである。
「怪我したの?傷痕、綺麗に消えるクリームあるから帰ったらあげるね」
無邪気に話しかけるひなたを、穴が開く程見つめていた不死川さんは、軽く開きっぱなしだった唇を閉じた。
ラフに遊んでいる頭をぐしゃぐしゃと掻いた。
「あまね様じゃないのか…すごく似てる。さっき、お館様の横から顔だけ出してこっちを見てただろ?何してるのかって思ってたんだァ」
見てたんだ。あれだけ取り込んでたのに、見えてたんだ。
という事は、他の人も気がついていたのかな…。
「あまね様の親族か?良く見ると幾分若いな」
少し納得がいったようで、不死川さんは落ち着いた声になった。
そんな不死川さんと目が合ったままでいて、ひなたはハッとした。