第5章 流星群が誘う旅
杏寿郎は嬉しかった。初めて鬼殺隊の本拠地に足を踏み入れた事。お館様に挨拶ができたこと。ここに来た理由は、杏寿郎とは直接関係のない事ではあり、その事を考えると誠に不本意ではあったのだが…。
でも、尊敬するお館様を間近で見られた事や、普段なかなか会う機会のない柱に会い、その勇壮な姿を目の当たりにしてますます、鬼殺隊士として任務に燃えようと気持ちを新たにしたところだ。
来てよかった。帰って父上にこの事を話してみよう。
父と話すのはなかなかに困難ではあるが、父はまだ炎柱なのだから。杏寿郎は強い父を尊敬している。きっと今の絡まってしまった状況を打破する道があるはずだと、今日ここに来て新たに勇気を貰った気がした。
そんな思いで産屋敷邸を眺めていたら、女の子がこちらに歩いて来るのに気がついた。
自分と同じ位の年齢の、とても綺麗な歩き方をする女の子だと思った。
「あの…」
「む? 」
女の子は自分の前で足を止めると、伏せていた瞳を上げて杏寿郎を見上げた。
「大丈夫ですか? 」
「ん? 」
思わず聞き返した。何のことだ⁉︎
女の子は自分の腕を上げて腕をさする仕草と、空中をポカスカ叩く仕草をした。
「さっきの、殺人拳」
「ああ!!あれか! 」
杏寿郎は女の子の言わんとする事が理解できた。この子は、自分が不死川に殴られている所をたまたま見ていて、俺に怪我が無かったか、気にしてくれていたのだと。
杏寿郎は頷いた。
「確かに、よく鍛えられた拳だった。一撃でも喰らっていたら失神していたかもな! 」
「ええっ⁉︎ 」
事もなげに、はきはきと言った杏寿郎にひなたはびっくりしてしまった。
「痛くないの?全部腕で止めてたでしょ」
「痛かった。だが、何という事はない! 」
キリリとした顔をして言い放つ。
「ちょっと見せて」