第1章 吉兆を告げる白梅
玄関の鍵を開けて家に入った槇寿郎は、ほんわかとした温もりに安堵した。
今日は夕刻には帰ると伝えていたものの、あまね様のご一家をお送りした後でお父上にお礼を言われ、家に上がりしばらく話をしてからお館様の所へ戻った。
耀哉と話をして、思っていたよりも遅くなってしまった。槇寿郎は家に残している二人の息子が気掛かりだった。手伝いの人には、いつも通りだと伝えておくべきであったと後悔した。
お手伝いの人は、杏寿郎達の夕餉の面倒までみてから帰る。でも今日は、槇寿郎が帰る予定だったので、子供達には食べさせなくて良いと言ってしまった。
真っ暗な中、家にたどり着くと、家の中の空気は暖かい。
「…ただいま帰った」
響かない位の声で呟いて居間に入ると、杏寿郎が千寿郎を膝に乗せて眠っている。
弟が寒くないように、杏寿郎は千寿郎をしっかりと抱きしめるようにしているのを見て、槇寿郎はそっと二人に近づいた。
腕の中の千寿郎をそっと杏寿郎から離して、千寿郎を布団に寝かせると、杏寿郎を優しく抱き抱えて同じ布団に寝かせる。
可愛らしい顔が二つ並んだ布団を、暫く眺めていた。
…俺の帰りを待ち、二人で仲良く寄り添っていたのだな…。
寝顔を見ていると、槇寿郎の胸に込み上げてくるものがある。
二人の寝ている布団の横に胡座をかいて座り、杏寿郎の頭を撫でた。杏寿郎の金色の髪は柔らかくて、まだ幼なさを感じる。
「杏寿郎、今日は良い日だったぞ。お前は聞きたがっていたな」
槇寿郎は今日の出来事を思い出していた。