第5章 流星群が誘う旅
気持ち良く眠っていたけど、人の声で目が覚めた。声は外…庭の方からしているようだ。
ひなたが休ませて貰っている客間からお庭は離れている筈だったが、声が届くほどの大声だった。
男性の物だ。数人いるようだ。その中でも一番大きな声は、どこかで聞き覚えのある声にも似ていた。争うような話し声だ。
…何か揉めてる……?
ひなたはムクリと身体を起こすとお布団から出た。襖越しでは話の内容までは分からない。でもとても緊迫した雰囲気であることが伝わってきて、部屋にじっとしてはいられなかった。
そっと襖を開けて、左右をキョロキョロ見回した。この家にはあまり人の出入りがないのか、広々とした屋敷に人の気配をあまり感じない。手伝いの人は見たけど、数人のため、広い屋敷では顔を合わせる時が少ないのだろう。
おじいちゃんの家は、昼間はいつも人の声がして賑やかだけど、同じような家でありながらこちらは静寂が広がっている。
ひなたには都合が良かった。部屋からそろりそろりと出て、声のする方へと隠れつつ近づいた。
輝利哉の家と同じように、美しい手描きの襖絵がズラリと並んだ座敷が続いている。襖を開けてしまうと、庭に面した広々とした畳の空間に飛び出してしまう事がわかっていたので、一番目立たない位置にある襖を最小限に開けて、そっと座敷に入った。コソ泥の気分だった。
畳の香りがとても良い。ひなたは青い畳を這うようにして進んだ。
庭に近い障子が全て開かれた明るい縁側に、羽織りを纏った男性が立っている。
男性は庭の方を向いて立っていたのでひなたからはその後ろ姿が見えた。
美しい立ち姿の、若い男性だ。離れていてもオーラが凄い。
肩までの黒いボブの髪も美しく、後ろ姿だけで凛とした雰囲気を発散している。
この立ち姿と雰囲気…誰かに似てる…。
おじいちゃんに似ている。ひなたには老人になった輝利哉の姿ばかり見ているから気がつくまで時間がかかってしまった。この若い男性は、若いのに貫禄があり、後ろ姿からだけでも、産屋敷家を率いている人だと分かった。
という事は、この男性は産屋敷耀哉だろうか。