【SLAM DUNK】さよならロストジェネレーション。
第1章 #1:おもしろいチーム
「おい、オヤジ。もう後半なんだけど……」
赤髪くんは言った。
パパは笑った。
「オレの出番はまだか?」
赤髪くんは聞いた。
パパは笑った。
「俺は本当に秘密兵器なんだろーな?」
赤髪くんは問うた。
パパは笑った。
「ホッホッホッじゃねーーー!!!」
「退場させるぞ!!」
マネージャーはまた赤髪くんにコールドスプレーを吹きかけた。
それが面白すぎて笑いを堪えるのが辛い。
私はコントを見に来たんじゃない、試合を見に来たんだ。
深く息を吐いて、私は試合に集中した。
ギャラリーからでも嫌というほどわかっていたけど。
間近で見れば見る程、赤木くん、流川くん、魚住くん、仙道くんの能力や実力が分かって更におもしろい。
だからこそ浮き彫りになる湘北の弱点。
PGとSGが非常に弱い。
流川くんと赤木くんだけが点を取れるとわかれば、その二人を抑えてしまえばいいだけの話。
得点力を失った湘北は当たり前に負けてしまう。
惜しい、非常に惜しいチームだ。
「パスが出せないのは厳しいね。ゴール下さえなんとかできれば活路は見出せるんだけどな」
「……」
「言われなくてもって感じ?」
パパは、少し間を開けたあと、
「桜木くん」
と、赤髪の子の名前を呼んだ。
桜木くんっていうんだ。
「ウォームアップをしときなさい」
「ぬ?オーマップ?なんだそりゃオヤジ。エラソーに」
桜木くんはパパに迫り近づく。
ウォームアップも知らないのか、桜木くんは。
「簡単に言うと軽い準備運動のことだよ」
「なぬ?」
「出番が近いから、身体あっためといてねって言ってるんだよ。頑張ってね、桜木くん」
その言葉と同時にかれはボールを手にしてボールハンドリングを始めた。
そのスピードは常人の5倍くらいの速さで思わず「はっや」と声が漏れてしまった。
私が初めてバスケに触れた時あんな早くできたかなぁ。
……できてないな、ボール落としまくってた記憶しかない。
そう思うと、桜木くんって子はなかなかセンスがある子なんだな。