【SLAM DUNK】さよならロストジェネレーション。
第2章 #2:問題児軍団
どのくらい1on1をしただろう。
先に限界を迎えたのは私だった。
もっと詳しくいうなれば、私の体力が限界を突破した。
これ以上走ったら吐く。
膝に手をついて、咳込んでは荒い息を繰り返す私を涼しい顔で眺める流川君。
といっても彼も少しは息が弾んでいるが。
大の字で地面に寝転ぶ。
空は真っ青で今何時なのか気になるが、今は指一本動かす元気もない。
暫くすれば、上がっていた息は落ち着きを見せ始める。
私が寝転がっている間も、ボールの音は響いている。
地面から伝わるボールの弾む音、地面を蹴る靴の音に安心感を覚える。
「流川君」
もくもくと自主練習に励む彼に声を掛ける。
集中しているだろうし、ボールの音で聞こえないかな、なんて思っていたけど、ボールの音が止んだから私の声は彼に届いたんだろう。
「がっかりした?」
返答はなかった。
「君が期待するほどの実力は私にはないよ」
全日本に選ばれたのだって、何かの間違いで、まぐれで、奇跡に近いもので―――。
もし流川君が、私が全日本選手に選ばれたから1on1に誘ったのだとしたら、申し訳なくなる。
現役だとか、男だとか女だとか、関係なく私と彼との実力は雲泥の差だ。
「バスケ」
真っ青な空を眺めていると、低い声が聞こえた。
ゆっくりと視線だけを彼の方へと向ける。
「バスケ、止めてどのくらいになる、んすか?」
「んー、3年かな」
「その間、触ったりしたんすか」
「してないよ。……あ、一昨日は触ったけど」
「…………」
急に黙るじゃん。
「そろそろ学校の時間じゃない?私も大学に行かなくちゃ」
「3年もバスケから離れて」
「ん?」
「それでも鈍ってないのは、すげーと思うっす」
小さく頭を下げて流川君は私に背を向けてコートを出て行った。
呆然と立ち尽くしていたけど、もしかして、慰められた?
高校1年生の15歳の男の子に、21歳の成人女性が?
恥ずかしすぎない?
顔が熱くなっているのがわかる。
叫び出してそこらへんを転げ回りたい衝動に駆られる。
が、私は大人の女だからそんなことしない。
部活に行った時、彼と顔を合わせるのが気まずくなるだけ。
と思ったけど彼のことだ、あと数時間後にはこのことは忘れているだろう。
そう考えたら馬鹿らしいな。
欠伸をひとつ零して、このことを無かったことにして忘れようと決意した。
