【SLAM DUNK】さよならロストジェネレーション。
第2章 #2:問題児軍団
先攻は私から。
流川君の実力は昨日の練習試合でなんとなくわかった。
だが、彼の本当の力はあんなもんじゃないだろう。
1on1の目的は、個人技の向上や弱点の克服と様々ある。
今回は、私も流川君もお互いにお互いの実力を知るためのもの。
チェンジ・オブ・ペースで彼の隙を伺うが、うーん、やはり彼はセンスが良すぎるな。
どこにも隙がないうえに、プレッシャーの圧が強い。
去年まで中学生とか嘘だろ。
彼を止められる選手は早々いないんじゃないかな。
右に行くと見せかけて左、左に行くと見せかけて右とクロスオーバーでフェイクを入れても引っかからない。
単純なフェイクは通用しないということか。
私は軽く息を吐いて、スリーポイントシュートのラインから、高く弧を描くようにボールを放った。
切れ長の瞳が少しだけ見開いたような気がする。
ボールを美しい曲線を描き、そのままゴールが決まった。
「よしっ」
まさか入るとは思っていなかったのだろう、流川君は不愛想な表情を更に不愛想にしている。
「攻守交代ね」
ボールを彼に渡して、私は腰を落としてじっと彼の目を見つめる。
お互いに見つめ合うこと数秒、彼の体が左に動いたため、抜かれまいとディフェンスをするも、私の動きはお見通しだと言わんばかりに、彼は私の股の間にボールを通して抜いた。
鮮やかで、華麗で、その鮮やかなスピードに反応できず、ただ彼がゴールを決める姿を見つめた。
綺麗だ。
美しいシュートフォームに目が奪われる。
同時に、羨ましいという感情が芽生えた。
希望と未来に満ち溢れている彼らの姿は、きらきらと、ぴかぴかと、輝いていて、眩しくて。
かつては私もそんな世界にいたんだと思うと、懐かしく羨ましく寂しい。
「おい」
感傷に浸っている私の耳に流川君の声が響く。
はっと顔をあげると、早くしろと言わんばかりの彼の表情に笑みが零れる。
ボールを受け取り、その感触を確かめる。
また触れることのできる嬉しさと後ろめたさが入り混じって複雑な気持ちが生まれるが、結局私はこうしてまたバスケに関わっているんだ。
本当は、きっと、私はそれを望んでいたということなんだろう。
「続き、やろうか」
今はただ、そう思うことにしよう。