第6章 偏執
「すみません、よく眠られていたのに。朝食は……」
一瞬なんの話をしているのか、と不思議に思った。そうか昨日は共に眠ったのだった。過去の記憶を繰り返す夢とは、自分にしては珍しい。目覚めと比例するようにジクジクと込み上げる鈍い圧迫感のようなもの、内側からゆっくりと自壊し焼け爛れていくような。
「腹は減ってない」
「美味しそうですよ、ほら」
「なら、お前が食べたら良い」
えっ、と024は面食らった。横目にみるとソーセージと目玉焼き、ホットケーキが焼けている。あと何某かのスープ。
コイツは記憶がない……、筈だ。とはいえどうにも所作も反応も記憶がないようには見えない。“美味しそう”とは何と比較したのだろう。バターを乗せると熱で滑り落ちた、黄金色のシロップを追うようにかける。
「なんだか分かるか?」
「ホットケーキ……ですよね?」
「食べたことは」
「死んでからは、ありません」