第6章 偏執
“ケフカの最近のお気に入り”……そういう評判だった。エーテル剤を濃縮したエネルギーに包まれ、管の中を漂う女は傍目には普通のニンゲンに見える。
「────」
「───、──?」
遠目に見る分には随分それは幻想的な絵面だった。他者にまるで興味を示さず暴虐三昧の魔導士が、管を出られもしない喋る死体に足繁く会いに来る。
「よくもまあ飽きないな……」
「他に喋る相手がいないんだろ?まあでも、アレが犠牲になってくれるおかげで俺達は平和な時間が得られるって訳だ」
兵たちはヒソヒソと陰口をたたいた。ケフカは知ってか知らずか過敏な反応を示す事はなく、そこから動けない024は時折そういった話を耳にして憂鬱そうな表情を浮かべた。
とはいえ兵以外の研究員や機械師たちは噂話をする事はあまり無かった。ケフカ本人と接する時間も少なく、自分たちにより良い知的快楽を与える雇い主だからかもしれない。
それから幾日か過ぎ、ある日のこと。
「しかし、貴重なサンプルが劣化してしまいます……!」
「ウルサイ ウルサイ!誰にものを言ってるんだ?責任者は俺だ!引っ込んでろ!!」