第6章 偏執
「……よく、分かりません。貴方が助けて下さったんですよね、ありがとうございます」
ケフカは面食らった顔をした。一瞬眉間に皺を寄せ、それから勿体振って身を反らし、しかし言葉がつっかえて閉口する。女はそれを見て微かに笑った。心当たりがある、と察したのだろう。
「ケフカさ、ま!?これは……!」
「ああ、目覚めたようです。俺は何もしていない、不可解な話だ。状態が変わらないよう至急各検査データをとれ」
部屋はにわかに研究員たちで騒がしくなる。やや離れた壁際でケフカは思案顔をしていた。というのも自らもまた実験の際に心肺停止状態から蘇生した過去を持っていたからだ。024はあれこれ状態を問診されながらストレッチャーに横たえられ、ふとケフカと視線がかち合った。どこか不安そうにする彼女の視線にツカツカと歩み寄る。
「お前、死ぬんじゃありませんよ。
……とはいえ身体は完璧に治療されているのを確認してある、次に俺に会うまで意識を失うな。いいな?」
それを聞き024はふっと表情をゆるめた。自分がどんな状態にあるか、またすぐ死んでしまうのか。その不安に対する“すべき事”を与えられ、生きようとする意思が瞳に宿る。
やはりケフカは眉根を寄せ納得のいかない顔をしたものの、鼻を鳴らすだけに留まった。