第6章 偏執
女は死んだ。魔力の負荷はあまりに大きく瀕死の身体が耐えられるものではなかったとされた。遺体は綺麗に傷が完治していたが、心肺は停止。瞳孔は開き、反射も無し。ケフカはまだ死後硬直をしていない腕を掴み、無造作に落とした。
「命……。いったい何処から来て、何処へ消えるのか」
意識のない人間の腕はまさに“ただの肉”だった。生命の宿らない肉は重たい、意識がある人の腕とは重さが変わって感じる程に。
「…っ!かはっ、ごほ……!!」
「!」
女───実験体024の呼吸が戻り目が見開かれた、気管に血が詰まっていたのか激しく咳き込んで身を起こす。一瞬呆気にとられたが項を引っ掴み頭を下げさせる、血がボタボタと吐き出された。
「かひゅ……、」
「お前、生きてるんですか?」
024は浅い息をつきながら眉を寄せ、辺りを見渡した。そして再びケフカを見る。
「た、ぶん……貴方だれですか……?私……?ここは、」
「フゥン、……そうですか。
……私はケフカ、帝国の魔導士です。お前は死から蘇った、死人だったのに。気分はどうです?生まれ変わったような快感か、死ねなかった絶望なのか」