第1章 実験体
"あなたもつかまってるんでしょ?"その言葉の意味を理解した。彼女は私のように不完全な死体ではないので研究所におらず見た事がないのだろう。あの子は何処かに閉じ込められているんだろう。魔力を持つ人間、魔導兵候補……。感情が不安定なのはその性か。
打たれ倒れたティナのすぐ側の物陰から幼い召還獣が転がり出る。逃げる召還獣にケフカ様の無慈悲な一撃が落ちた。
燃え悶える召還獣、その火で照らされたティナの叩かれた頬、研究員、研究所……。ケフカ様が何言か喚き、ティナの髪を掴んで無理矢理立たせると出て行った。私は自力で管から出る方法がない。生存者がいないか、……探せない。ヒビの広がるガラスに手をつき、縮こまる。
少ししてシドさん、他にも何人かの兵士がやってきた。管が開けられ外傷の有無を確認される。事情を聞かれ覚えてる限りを話す。その際に少しだけティナの話を聞く事が出来た。彼女は皇帝が見つけた魔力を持つ孤児らしい。なぜ生まれながらにして魔力を持っているのかは謎。ケフカ様が魔導兵になる前からティナの世話を見ていた話。
……おかしい、変だ。シドさんは嘘をついてるようには見えなかったけど。