第1章 実験体
「ティナ!!!」
怒声。開け放たれた扉からの逆光で顔は見えないがケフカ様だ。
「いやぁあああ!ここは おうちじゃないっ!おうちにかえ…っ、」
泣き叫ぶ少女を押さえつけ、頭にはめ込まれる"輪"。赤かった瞳はたちまち光を失い哀しげな藍色へと沈んでいく。膝から崩れ落ちた彼女を一瞥しこちらを見る影。
「(…ケフカ様)」
「おや……起きてたんですねぇ」
光のなくなった部屋にはもはや扉から入る逆光しかなく、表情は伺えない。あのケフカ様の魔力が見えなくなる程の色濃い魔力を放っていた少女は今や無言だ、どこを見ているのか分からない目をしてぼうっと立っている。
「(その子は……)」
声が分厚いガラスで届かなかったのか、それともあえて無視したのか。ケフカ様は研究員の死体を脚先で避けながら周囲の機械を確かめる。
「こいつ等の代わりはいても腕利きの機械師は帝国には少ない……。よくもまぁここまで派手に暴れてくれましたね……?えぇ?ティナ!!!」
パァン!と"ティナ"と呼ばれた子が打たれた音がした。