第1章 実験体
ティナが孤児なのだとしたら、なんであの時―……。
『おうちにかえる……!!!』
……疑問は残るが悠長に考えている暇は無かった。何せ研究所がこの有様だ。召喚獣達と違い私は移動のために自ら歩く事になるだろう。一歩踏み出せばガラス片が鳴る、いたる所が血で滑った。惨状をどうにか抜けた先にセリス様が立っていた。騒ぎを見に来たのか?
「あっ」
目が合うとセリス様は声を上げたが躊躇して口をつぐんだ。次の言葉を待つものの目を泳がせて何も言わない。
「……ティナ?」
私が名を呟くとセリス様がハッとしてこちらを見る。そうだ、セリス様は現役魔導兵。なにかしら関わりがあるのだろう。
「ティナならもう、研究所にはいませんよ。セリス様」
「そ、う……ありがとう」
何やら思い詰めたような表情で研究所へ視線を戻す。