第5章 拠り所
「そう、ですね。前は日が登らないうちに研究所へ“遊びに”いらっしゃってましたし」
そう言うとケフカ様が目を細めて薄く笑った。光球が握りつぶされるようにして消え、暗闇が戻る。息遣いが近寄り、柔らかな感触が唇に落とされた。
そのまま毛布があがってきて包まれる。私は、今の感触がなんだったかという答えも聞けず、身を固くしていた。そうしていると横から喉の奥で笑う声がする。
「お前は面白いですね」
「……」
何も答えられなかった、言うべき事が分からなかった。ただ、声に緊張を解かれたように寝返りをうって身を寄せる。私は少しでも意味を求められる存在になれたのだろうか、嬉しい筈なのにどこか怖いような気もする。
暗闇の中で真っ赤な魔力が揺れている。いつもより仄かに明るい気がして、手を伸ばそうとすると胸に遮られた。それはそうだ。
腕をなぞり、肩から頬へとあがるケフカ様の手のひらを感じる。ゆるゆると指先が頬を意味もなく撫でている、心地いい。少しあって、指先がゆっくりと唇をなぞった。───先程の柔らかさとは違う感触に赤面したものの、この暗さなら分からないだろう。