第5章 拠り所
ケフカ様のベッドは大きい方だろう、とはいえ船の寝台である。寝返ろうにもあまりスペースはない。眠りが浅いのか時々もぞつく度にちらりと様子を伺う。何度目かも分からない頃、ケフカ様が片手を上げて照明代わりの光球を浮かべた。突然の眩しさに目がチカチカする。
「───……起きてたのか」
「……私は眠らないんです」
「なに?」
ケフカ様が身を起こし眉間にシワを寄せた、もしや知らなかったのか。確かに魔法で眠りについたり怪我で気を失っていたので、床を普段から共にしないケフカ様は知らないだろう。
「眠くはならないのか」
「ええ、まあ……ふふ」
「お前……すぐ笑いますね」
「すみません」
眠くないか、と頬に触れた手がこそばゆい。対してケフカ様は起きぬけのせいか眠たげな目をしている。そのまま何を言うでもなく髪を指先で弄ばれる、私も眠らない身なので特に何をするでもなくケフカ様を眺めた。つ、と長い爪の先が耳から顎へと這う。
「……眠れませんか?」
「いつも通りですよ」