第5章 拠り所
「ケフカ様の指にはどう感じられているんですか」
「……不思議と感覚はある、じゃなきゃ分からないのに触らないだろ。しかし……、痛みがないなら心地よさとはなんだ?
危機がないなら安心もない、無だ。何も分からない」
唇に触れていた指が離れていく、その手を追うように両手で包んだ。私には温度が分からない、でも口づけるとやはり節くれ立つ指の固さも肌の軟さも分かる。
「何も、感じませんか」
「お前は……、」
頭の上にケフカ様の頬が乗る。深い溜め息があって、続く言葉はなかった。そっと手を開放すると腕が引いていき抱きしめられる。きっと考えを変えるほどの答えにはなってないのだろう、それでも少しだけ苦痛を和らげる事が出来ていたら良い。
耳が痛いほどの静寂が満ち、夜は更けていった。