第5章 拠り所
「それはブラッドソード、戦うお前の文字通り手足となってくれるでしょう。他の剣は慣れないお前には癖が強い、暫くはそれに慣れると良い」
「ありがとうございます」
そういえば他の魔導士は皆当たり前のように剣を持っているけれどケフカ様は持たない、支給されてはいたらしいそれはどれも綺麗で使われていたような様子もない。
「なんだか……勿体ないですね」
「必要ないなら価値がない、必要があるのに勿体ないと思うのは価値を殺す」
必要ないなら価値がない、か。それはまさにケフカ様が自分を、そして他者を見る時の感覚なのだろう。複雑な思いを感じながら帯剣した。
───その日の夜。
食事は海上ということもありいつもよりは質素なものとなっていた。ケフカ様は食が細く偏食な事もあり、海上ではほぼ食べないといってもいいくらいだ。食事を終え、部屋に戻るとふと気がついた事があった。
「……あの、ケフカ様?私の寝台はどこでしょうか?」
ハア?という顔で寝転んだ隣を手で叩いて示される。前はティナと共に眠っていたが、今や魔力の回復も自分でできるのだからケフカ様と床を共にする理由もない。
「な、なぜ私の分が無いのですか……?」
「いつもティナと寝てるのになにを今更……」