第5章 拠り所
驚いた、まさか私がケフカ様から一本とれるとは。思わずまぬけな顔を晒してしまう。
「……いいでしょう、024。お前に渡したい物があります。来なさい」
「えっ?あ……はい。」
促されるまま自室へと移動する。ケフカ様の自室には運んできた荷物以外にも様々な備品が既に設置されていたが、その中でも大きな木箱の前に立つ。指先をひょいと跳ねさせると呼応するように開いた、中には装飾の素晴らしい鞘に収まった剣が何振りか入っている。
「私は使いませんのでね、好きになさい」
「えっ、でも……」
「剣など性に合わんのだァ!使うなら自らの手足で充分ですよ、お前に必要ならそれに越したことはない。……そうですね、これがいい」
ケフカ様が一振り手にするとこちらに差し出す。深く赤い色をした細く長い刀身。おずおず受けとるとそれを抜いてみる。すらりと伸びた刃はまるで夜のような漆黒の色、およそ普通の剣ではなかった。
「これは……」
まるで自らの血肉とばかりに体に馴染む。手にすると妙な暖かさのようなものがあって、体が軽くなるような心地がした。