第5章 拠り所
───船旅ではする事もなく海を眺めるばかりだ。兵は訓練でなくても体を鍛える事に余念がない。それはそうだ、この先の地で人と戦わなくても魔物と戦うこともあるだろう。
「……少しは鍛えなきゃなぁ」
「鍛えるぅ?死んでる人間がなにを鍛えるんだ?」
訓練用の剣に手を伸ばすと背後から唐突にケフカ様の声がして思わず取り落とす。
「驚かせないで下さい……」
「ヒヒッこれは失礼。お前、剣なんか使いたいの?」
「魔法がすごく得意な訳でもないですし……、手段が沢山あるにこしたことないかと思って……。」
「ふうん……、あっそう」
興味なさげな返答を聞いて再び剣に手を伸ばすと横から箱にもう1本白い腕が伸びる。
「あの……、ケフカ様って剣も使えるんですか?」
「ボクちんはなーんでも!できるんですぅ。」
そう言うと重さなどまるで感じていないように易々と鞘から抜いた、それを宙に投げて弄ぶ。訓練用で刃は潰してあるとはいえなかなかヒヤヒヤする眺めだ。