第5章 拠り所
笑みを返した、それは大よそ普通ではない答え。ケフカ様を繋ぎ止めておきたい私の心。微かにケフカ様が狼狽えたように見えた。
「……そう、ですか。」
「はい。……だいぶお話しましたね、喉が乾かれたでしょう?お茶を淹れてきます」
再び思考の海に沈んでいくケフカ様を一瞥し私は紅茶の為に湯を沸かす。どうしてほしかったのかは分からない。きっと私が何をしても、ケフカ様が自分でああ思う限りどうにもならない。なら私はどんな結末を選んでも最後まで傍にいたい。きっとこの人はただ正しくないというだけで頭から否定され続けてきた。まるで、それまでの葛藤も時間も……存在さえ意味のないものだと言うように。
私にとってその苦しみもケフカ様で、存在も必要で。……なんて、おこがましいだろうか。でも私が存在している事も、それを許し意味を作っているのもケフカ様なのは事実だから。
紅茶を持ってきた頃には普段通りの落ち着きのなさを取り戻していた。いっそ静かな方が心配なので、それはそれでよしとする。この人を心配するのは……お門違いかもしれないけど。