第1章 実験体
夢。辺り一面が赤い。いっそ深すぎて黒くすら見える濃い赤に炎が色を滲ませた。とても攻撃的な赤だった。
「ねえ」
誰かの声に意識がグニャリと歪み現実へ持ち上げられた、目覚めたものの辺りは見通しがきかない暗さをしている。研究所にはいつも人がいて灯りがなくなるなんて事はなかった。管の前に誰かいるようだが……、ぼんやりと赤い魔力が見えるだけだ。
「ファイア」
両手に火の玉を乗せた子供が照らし出された。金髪が魔力でさざめいている……どうにも異様な雰囲気の子だ。しかし灯りによって少女の肩越しに照らし出された研究所の様子に私は絶句した。床に何人かの見回り兵が血まみれで倒れている。割れたガラス片が散らばり灯りをちらちらと反射していた。一体なにが……?
「みつけた、あなたも つかまってるんでしょ?たすけてあげる。だから……いっしょに にげよう?」
こんな子は一度も見た事が無いのに……。少女はガラス管に手の平を当てた、指先から植物が育つようにひびが広がる。その瞳は赤い。あたり一面、全てが、夢に見た攻撃的なあの赤い色をしている。