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魔導人形

第5章 拠り所


「ケフカ様、長い船旅です。すこし……お話でもしませんか?相手が私でよろしければですけど……。気晴らしとまでは言いませんが、暇潰しにはなるんじゃないでしょうか」

「話……。」

ケフカ様は視線を泳がせながら、そろりと手を離した。強く握られていた手首に赤く痕がついているのが見える。ケフカ様は手首をじっと見やり、ふ、と息を吐いた。

「座りなさい……。」

「……ありがとうございます」

手の一振りで椅子がひとりでに私の元へとやってきたのでありがたく座らせてもらうことにした。ケフカ様は指先を弄びながら宙を眺めている。多分、なにかしら言いたいことはあるが言葉にならないのだろう。常日頃、感情の起伏すら意志で制御を出来ない人だ。でもそのケフカ様を拒否したり責めるのは感情を逆撫でてさらに精神を乱れさせるだけだろう。

「わたしは死人なんだ、この体はお前とそう変わらない……。もはや感覚も残っているのは味覚程度。一番に感じられていた痛覚ですら!なくなった!あるのは……、体を内から魔力が食い破る感触だけだ。これだけが、わたしが今ここに存在していると感じさせている……。」
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