第5章 拠り所
「……………。お前を拾ったのは、ここです。ゾゾという……薄汚れて寂れた街でした」
ケフカ様はうつむき目を閉じた、手首を離してはくれなかったが代わりにケフカ様の羽ペンが地図へと降り立つ。インクのないそれは地図の上を滑り、ゾゾという街だろう場所をカリカリと引っかきながら円を描いた。
「今から行く場所は違う、……真反対だ。そこが故郷かは知らん。そこには行かない。」
「……はい」
「……………。」
「ケフカ様」
「……平気です、」
大丈夫でも、なんでもないでもなく、平気……か。確かに様子はおかしかった。なにより変なのは自分の思い通りにならないと暴れだすケフカ様がこんなに静かなことだ、沈黙がただひたすら横たわっている。まるで時間が失われたみたいに。ケフカ様は暫く目を閉じ黙っていたが、ふと呟いた。
「お前は……私の人形でしょう?」
「はい、ケフカ様の物ですよ。これからも」
「これからも……?」
「はい、ずっとです。」
ふとこぼれた問い、顔をあげたケフカ様のそれは疑いの眼差しだった。苦笑がもれる、どうしてほしいのだろうか。まるで何がしたいか分かっていない駄々っ子だ。