第4章 恐怖の色
宿は皇帝と上層兵、ケフカ様が泊まっている。ティナや私と死に損なった下級兵は夜営テントだ。皇帝の安全の為、……らしい。
その為ケフカ様がこのテントにいる筈はないのだが、この人もなにか思う所があるのだろうか?
「私には……救えない、こんなにティナが傷ついてるのに…」
「そんな事か」
“そんな事”……言い返したいが、込み上げる感情で言葉が喉につっかえてしまったように感じた。ぐい、と腕を掴み引っ張られた。突然のことにぎょっとはしたがなされるがままフラリと立たされる。ケフカ様は無表情にその手を離した。壊れた人形のように体勢を保てず崩れ落ちる、どうやら魔力が底をつきそうになっていたようだ。認識した途端に苦しい気がしてきた、視界も霞んでいっている気がする。
「あの輪は魔力を安定させるのだ。今のティナは弱っているからな、魔力の放出もほぼない筈だ。そこを馬鹿みたいにずっとケアルを放っていたんだ、こうもなる」
「馬鹿、みたいって……」
「ああ!失礼。“みたい”ではなく、馬鹿でしたねえ!」
嘲り薄ら笑うケフカ様に食って掛かろうにも頭が重い、唇を噛みうつ向くとケフカ様に抱えあげられた。
「お前の移動にはもう少し考えてやらねばなりませんね」
眠気に襲われるのはきっとこんな感覚だった。抵抗しても抵抗しても、意識が薄れる。眠る必要などない体の癖に、こんな時ばかり……!最後の力を振り絞りケフカ様のマントを握ったものの、抵抗の意は解される事なく私の視界は暗転した。