第9章 瓦解
「ティナは、どうしてましたか?」
「…………」
何を答えるべきか分からなかった。何が悪く、どう繕うべきなのか。何もしていなかった。ティナはすぐに精神に変調を来し魔力暴走させないようずっと操りの輪をはめて過ごしていた。
輪を外しても簡単には意識の霧が晴れないほど深く。
「……力になれなくて、ごめんなさい」
「力に?ヒヒ……お前に何ができる」
何も無い。こうなる運命だったのだ。分かっていた事だ。ただそれを遅くする為に依存先として024を用意し充てがった。歳も重ねて一端に反抗心も出ていたし、居ても居なくてもこうなっていただろう。
「……とにかく、ティナは取り戻す。皇帝はただの幻獣としか思ってませんからね、役に立たないなら殺される」
024が責任でも感じているのか唇を噛みキツく膝を抱き寄せる。セキニン。俺達はどちらも自らの欲望を埋めるために哀れな幻獣の小娘を弄んでいるにすぎない。
本当に哀れなら殺して終わらせてやればいいのだから。
「私は……代わりにはなれないですか?」
「お前が?」
鼻で笑うと爪を胸にたてて示す。戸惑った様子の顔を眺めた。
「お前は魔物でしょ。ティナは幻獣、違いは魔導の力だ。魔の導べと魔力は似て非なるものなんだよ。だからお前の魔力と腹の底のヤツは混じり合わない、お前が消えることはあるかもしれませんが?」