第9章 瓦解
「ケフカ様、眠れないなら私がいなかった間に何があったのか教えてくれませんか」
魔法の日だまりで夜から隔離された小さな空間に並んで膝を抱え座る。あれから……何があったろうか。記憶を手繰る。
「……ドマの敵情視察最後の日、俺は三闘神の像とサマサの秘宝を見つけた。お前の溢れる魔力でチョーカーは壊れ、代わりにその場にあった秘宝に結びつけた。
お前を今日目覚めさせるまで、その膨大な魔力を取り出しては結びつける作業をしていたのだ。だが中身は残っているし魔力は発している……、まだやらねばならない」
「私、味覚はまだあるんでしょうか」
「ああ……おそらく」
そんな話をしていたな、と横目に見やると024はこんな状況で嬉しそうに笑った。ときどき俺なんかよりも気が狂っているように思う、正気とはなんなのだろうか。
俺の味覚はもう無いのだと知れば、その顔は歪むのだろうか。
じくり、じくり、と魔力が這い出ようと『自分』の枠が内から削られていくのを感じる。
ふと024が俺の肩にぴったりと身を寄せた。……やはり、3年前にさっさと壊しておくべきだったのだ。意味もない破壊のうちに。