第9章 瓦解
「024」
暗闇の中で感触だけで首に手をかける。ゆっくりと指が柔らかな肉に食い込み、片手で収まる細い首が恐ろしく、どこかやっと手に入るような焦燥感もある。
喉が息をつまらせた音を断続的に発して、細くなった気道を風鳴りのような声を漏らし、だがお前は私に抵抗しない。
表情は見えない。やっと終わる。そっと唇を寄せるともう酷く冷たかった。妙な満足感を覚えながら手を離そうとして、しゃらりと指に何かがまとわりつく。暗がりの中の筈なのに光を跳ね返したチョーカーを目にし、ドッと不快感がこみ上げる。おかしい、終わらせたのに。
もう戻らないのに、どうにもならないのに、俺は何にこんな。
「……ッ!!」
吐き気に口元を抑えてベッドから転げ落ちる、なんとか桶まで這いずってそれをぶちまけた。喉が焼けるようで笑えてくる。しかしそれもほんの短い間だけだ、夜の静けさが戻り、感情が凪いでいくのが分かる。終わった。
「ケフカ様……、大丈夫ですか」
「!!?」
全身が総毛立つ。視線を走らせると殺したはずの女が立ち上がるのが見え、目眩のようなものを感じた。白い手が暗がりから俺をどうにかしようと伸びてくる。チョーカーが揺れている。