第9章 瓦解
ドマ。私の記憶に唯一ある人が行くと言っていた場所。帝国と対立しリターナーと組んだらしく、情勢は明らかにビーカーに収められる前より悪化していた。
見慣れない若い兵士も沢山増えている、見つからない顔ぶれはもう亡くなってしまったのだろうか。あれから3年の月日が経ったらしい。それだけの時間、ケフカ様は一人で何を考えていたのか。
戦場に向かうとは思えない発色が良い化粧が顔を彩る、鏡越しに見えたケフカ様は先程の感情を忘れてしまったように機嫌が良かった。
「お前、何色が好きですか」
「……スカイブルーが好きです」
ケフカ様の硝子玉みたいに表情がない瞳の色だ。この目が恐怖や悲しみを映す事なんてないと思っていた。
知ってか知らずか精密機械でも扱うように手をそっともち、慣れた様子で爪を染めていく。スカイブルーと言ったからか碧色から明るくグラデーションを描き星のように輝いている。
「美しいものは良い、強いものも。壊したくなる」
すう、と目が細まってゆっくりと視線が爪から顎へと這い上がる。視線がかちあった。唇が震え、喉に言葉がひっかかっている。
「……私、まだ、ちゃんと意味がありますか」
「ええ、勿論」
道化の白々しい笑み。もはや笑顔すら張り付いてしまったらしい。それは泣きたくなるほど求めていない言葉だった。