第8章 独占欲
眠れない夜は長い。それでも、いつもと違う。紙をひっかくペン先の音が静寂を追い払う。心細さと微かな充足感。ケフカ様の特徴的な香水がしみついたベッド。でも、やはり不安だった。
目を閉じて、どのくらい経ったろうか。ふと瞼を開くとケフカ様がうつらうつらと船をこぐのが目に入る。眠りが浅い人ではあるし昼間はあれだけ暴れた、しかも夜通し頭を使ったとなればそうだろう。
「ケフカ様」
「……ん、」
むずがるような音をもらし、眉間をもんだ。ふと顔をあげると窓へ目をやる。空はもう白んでいた。ケフカ様は首をまわすと止めるのかと思いきや再び紙へと視線を落とす。指でなぞり、たたき、なにか考えている。
「眠らないんですか」
「そんな暇ないでしょう?」
再び爪を口元に運んだが普段から美容に気を使う人である、逡巡したのちに指を噛み始めた。徹夜で頭がまわらないのか行き詰まっているように見える。
思えばケフカ様が何かを作る姿をきちんと見るのは初めてだった。いつも研究所にこもって仕事をするものでティナといる時にはこんな様子を見た事がない。