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魔導人形

第8章 独占欲


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ケフカ様の抱き方はおよそ一般的とは言い難かった。独りベッドに横たわったまま泥のように沈み丸まっている、疲労感がすごい。肉体の解剖と理解、魔力と暴力の発散、のような感覚が近い。先にあった口付けを媒介に中を探られていたアレのように、ケフカ様にとって身体の繋がりとは“私を暴き支配する”という類の認識なようだ。
……私自身がその感覚の愛しさを実感する前に抱かれていたら恐らく精神的に参っていただろう。しかしそれでも疲労と独りの時間を与えられると、微かな不安と虚しさを感じずには居られない。

彼にとって言わば等身大、今ある最大の理解と情なのだろう。でも、私の最上の愛とは形が違う。明確な違いは言語化できないものの、刹那的で喪失感のある抱き方に不安を拭い切れはしなかった。
満たされれば満たされただけ強欲になっていく自らの悍ましさも虚しい、ここにきっと“愛”はあり与えられているのに。

「……無いものねだり」

ぽつ、と呟くと机に向かって某かの図面を描いていた本人がこちらに僅かに視線をよこした。しかし視線は再び作業に注がれる。本当に、無いものねだりだ。今も相手の脳内にあるのは恐らく自分の事で、必要な事で、“大切”にされているからだ。
……大切、とはなんなのだろう。私は何が欲しいのだろう。
今の視線や注力だって嬉しいには違いないのに。今までのケフカ様ならあり得ない行動だったろう。

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