第8章 独占欲
ケフカ様は輪を途中のまま机に放るとコチラに向き合った。唐突なことに何をする気かと身構える。
「……クック、お前はこういう事の方が怯えますね」
「楽しそうにしないでください……」
「恥ずかしい女、口ほどに物を言うってやつですね」
頬に手があてがわれ指先が目尻をなぞる。先程までの会話を思い出し視線を反らす。不安は事が起きる前提でしか感じない、……私はケフカ様がこちらを見たり触れる度にそういう不安を感じる。それをいつも見透かされて笑われていた、と改めて突きつけられるのは恥ずかしかった。
「隠す気あるんですか?真っ赤になって」
耳をつままれると温度の分からない私にも感覚の違いはある。この違和感は耳が熱いのだろう。隠すつもり……は多分ない。知ってほしいが見られたくない、そんな矛盾した気持ちがある。
「……俺にこうして構われるだけでよくそんな顔できますね」
「わざとじゃないです」
「はは、わざとでこんな顔できないだろ」
俯けば覗き込まれる。愉快そうな表情をしていて、恥ずかしくてたまらないのに嬉しい。嬉しいから逃げられない。……ついこの間、船に乗るまではこんな会話をするなんて想像もできなかったのに。