第8章 独占欲
「…………お前は私を怖がらないくせに、どうしてそんなものが……」
「怖がられたいんですか……?」
「威厳の問題だ!」
威厳。不服そうにするケフカ様に笑ってしまう。まるで私に怖がられたいとでも言うような。それで言うならケフカ様を恐れる部下たちをもっと気に入っていて良い筈なのに。
「信じていると怖くないんですよ」
「つまり舐めてるんだろ」
「違いますよ、その手にあるのはなんですか。
私がケフカ様に何かをすれば確かに自由も命も奪える力はありますし分かってる。でも貴方は、最後は私の話を聞いてくれますよ」
「……舐められたもんです」
やはり嫌そうに吐き捨てられたものの、戸惑いが見られた。手にしている作りかけの操りの輪を意味もなく弄る。今だって怒りに任せて作業を進めればよくて、わざわざ私の話を聞く必要なんてなかったのに呼んだ。私の為ではなくて自分がそうしたくて気になったから。
私だってそうだ、あの輪をつけられて二度と自分の意志は取り戻せないかもしれないのに。味覚を失う話とは違い、そんな事考えもしなかった。
「じゃあ、好きで甘えがあるからです」
「歯が浮くような事を……」
「なら“信じている”というのが適切なんじゃありませんか」
「可愛くないですねえ、お前」
ケフカ様がふっと笑った。怒らせるだろうと思っていたのでそれを見つめてしまう。