第8章 独占欲
「不安ですか」
ケフカ様が片手で輪を撫でるように魔力を込めながらこちらを見やる。椅子を引くと片膝を叩かれた。まるでそれは駄々をこねる子供を座らせようとするような。……シドさん曰く私とケフカ様の歳はそう変わらない。躊躇していると雑に腕を引かれてつんのめる。おそるおそるケフカ様の腕の間に収まるとふん、と鼻を鳴らして作業を再開する。
「何が恐ろしいんです」
「何、って……?」
「不安というのは成功が前提にある、しかしそれが揺らぐ些細な要素があるから恐怖になるのだ。お前が恐れているのは俺か?コレか?それとも内側のモノか」
恐れ。そうか、私はこれが失敗するとは考えていないんだ。確かにきっとケフカ様はやり遂げるだろう。なら私は何が不安なのか。あのヒト型の意識、体を奪おうとされていないかもしれない事。それは失敗には繋がらない筈だ。
「内側の……、意識があってヒトのようでした。なぜ恐いのかは分からなくて……でもやる前に知らなければいけない気がして」
「知らなくていい!そいつは図々しくもお前から何かを奪おうとしている、外から来た異物だ」
「……はは」
まくしたてたケフカ様に笑ってしまう。必死だ。そりゃ、私はこれが失敗するなんて思わない筈だ。失敗はしない、悪くなんかならない。信じるしかない。