第7章 魔性
さて、先程の戦闘中にあった感覚や声の事を話すべきか……。ケフカ様に言われるまま金髪を流す腕にはもう結晶はなく、食い込んだように赤い痕が残るのみだ。
「お前、魔法は嫌いですか」
「……見る方が、好きですかね」
「みる」
「はい」
こちらを伺い見て反復すると首を傾げた。グ、と拳を握って付き出すと手の甲に霜が集まっていく。ゆっくりと芽吹くように氷が伸びて薔薇の花を咲かせた。
「す、すごいですね……」
「フン、そうだろう?俺は操気が得意だからな、よくセリスの機嫌取りに作ってやったんだ。なぜ女は花が好きなのか」
「……別に花が好きな訳ではないです」
ムッとしたのが声音に出てしまっただろうか、ケフカ様がコチラを見やり湯に手を引っ込めた。たちまち花が溶けて無くなる。……せっかくだから貰っておけば良かったかもしれない、変な意地を張ってしまった。
「セリスは……俺と違って成功作ではあるが、魔導を閉じ込めすぎる。お前、シドに何かされた事はありませんか」
「えっ、シドさん……ですか?いえ、特には何も……」
「あの変態ジジイには必要以上に近づくんじゃないぞ」
ケフカ様が珍しく沈んだ声をもらし、腕を抱えるようにして湯に縮こまる。まるで寒気でもするように。