第1章 実験体
私は知らない事ばかりだ、自分の人生の記憶、ティナの事、ケフカ様の過去、セリス様のあの表情の理由。
「なにか御用はありませんか?セリス様」
「え、」
私は誰の兵士ではない。そして今この城内で一番自由に動けるだろう。セリス様は私を見つめていたが間を置いて、一つ呟いた。
「ティナを……探してくれる?1人には、させたくなくて」
「仰せのままに」
セリス様には立場があり、私には無い。だからこそ受けられる命令だ。それに私もティナが気になっていた、あの子は何か知っている気がする。何を、かは判らない。でも私だって“生きている”、知りたい衝動は抑えられなかった。
仄かに白みだした空と暗い城下町を横目に私は足早に城へと向かった。