第7章 魔性
「なんか、とは何です」
ジロ、とケフカ様が男を見やるとヘラヘラしながら適当な事を並べだす。流石のケフカ様もウンザリした様子でハイハイもういいです、と遮った。
「じゃ、水の方はよろしくお願いしますね。俺はこれで!」
じゃあな、と小声で肩をせっつかれ、馴れ馴れしい人だなぁ……と見送る。今まで帝国では出会してこなかったタイプだ。ケフカ様が片眉をあげ、小突かれた方の肩を抱き寄せた。
「……!」
緊張で固まると愉快そうな笑い声がし、機嫌が直るのが分かる。妙に恥ずかしくなっているとケフカ様が離れていく。ホッとしたような、ガッカリしたような……。
ケフカ様はといえば板で作られた箱のようなものに魔法で水を溜めていく。何をしてるのかと眺めていると、水面が湯気をたたせているのが分かった。お湯だ。ふとケフカ様と目が合う。
「お前、ここに残るって事は入りたいんですか」
「え?」
目を点にさせていると、脳裏を“女に配慮するほどの板がない”という発言。何かあったらの話。お湯がためられた容器。ゆっくりと話が繋がっていく。もしや……、お風呂?
「……あっ!?いや、違います!すみません、私いきますね!」
「遠慮しなくて良いですよぉ?」
ニタ、と笑うケフカ様にわざと引き止めているのが分かった。ただ私の反応を面白がってるだけだろうに、自分でも分かるほど赤くなってしまう。