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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第10章 恋慕3−1 花の赦し ノーマルEND【家康】


ーーーー数日が過ぎた。

名無しの熱は下がったが依然として目覚めていない。

まばゆい陽光に包まれながらも、涼しい風が吹く心地良い日。

家康は名無しの好きな花をたくさん摘んできた。

両手に抱えきれない程。

大の男が恥ずかしくてたまらないけど。

『わぁ、綺麗!』

いつもの名無しなら、絶対に喜んでくれるだろう。

そして彼女自身も花になったような微笑みを見せてくれるはず。

好きなものに反応してくれないだろうか?

一縷の望みを抱きながら、眠る名無しの顔の近くに花を寄せる。

『いい香り』

うっとりと花の香りを楽しむ様子が目に浮かぶ。

一際瑞々しい大輪の花を、名無しの片耳の上に飾った。

『似合う?』

名無しはきっと、はにかみながら聞くだろう。

「似合うよ。あんた頭の中もお花畑だもんね」

想像の中での名無しに対しても、つい、いつもの憎まれ口が出てしまう。

何で素直に誉めてあげられないのか。

『ひどーい!』

名無しはむくれるだろう。

そんな顔も可愛くてたまらなくて‥‥。

家康の中で思いがどんどん溢れて、目の奥も鼻の奥もツーンと熱く痛くなる。

眠る名無しの髪を手櫛で優しくすいた。

片側に寄せ、首の横から胸元へさらりと流す。

そしてそこに、小さく可憐な色とりどりの花を飾っていった。

「可愛いよ。花のお姫様みたい」

家康の唇から、ようやく素直な言葉がこぼれた。

だけど‥‥名無しは何も言わない。

眠ったまま‥‥。

「ねえ、せっかく誉めたんだからさ、何か言ってよ」

胸が苦しくてたまらず、絞り出すように言葉を続ける。

「目を覚ましてくれたらそれでいいんだ。もう俺のものにならなくてもいい。ただ、笑顔を見せてくれれば、それだけで俺は‥‥‥‥」

家康は名無しの隣に横になる。

ほんのりと温もりが伝わってきた。

気持ちが通い合い、抱きしめ合ったあの夜を思い、花の香りに包まれながら、いつしかうとうと微睡み始めた。
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