第33章 歪んだ愛で抱かれる 後編 【三成】R18/ヤンデレ
無事に帰還した名無しは、あかあかと燃えるような夕日を背にした安土城を見上げる。
(ああ…とうとう帰って来れた…)
ここを離れてから色々なことがありすぎて、長かったようなあっという間だったような、不思議な気分だった。
「名無しーっ!よく帰ってきてくれたな!…大変だっただろ」
真っ先に駆け寄ってきた秀吉。
くしゃくしゃの顔は泣き顔なのか笑顔なのかわからない。
他の武将たちも皆、名無しに温かな労りの言葉をかける。
出戻りで、なおかつ反逆者の妻だったという大きな訳ありである自分。
果たしてどんな扱いを受けるのかと内心怖かったが、
むしろ、織田軍の窮地を救うために嫁ぎ、謀反騒動へと巻きこまれてしまった名無しをねぎらい、大切にしようという空気が漂っていることに大きな驚きと感謝を感じた。
すぐに祝宴が開かれる。
豪華な料理が並び、賑やかな雰囲気の中で笑顔を振りまいていた名無しだが、身のうちには違和感が燻っていた。
身体が熱く、鼓動と呼吸がやけに早くて落ち着かない。
それは杯に注がれる酒を飲むほどに強まった。
この体の感じには何度か覚えがある。
意思に反した、その場にまったくそぐわない衝動がこみあげる感覚にも。
信長、秀吉、光秀、政宗、家康、慶次…
火照って潤んできた目で武将たちの姿をぐるりと見渡し、探したのは三成の姿。
彼は誰かと談笑していた。
スッとした首の途中にある、そこまで目立つわけではないけれど話すと動く喉仏
わずかに節のある長い指
名無しはもう周囲の会話など上の空で、ひたすらに三成を見つめる。
愛を囁く声や、肌を愛撫される感触が生々しく思い出されてしまい、下腹部がギュンッと疼いた。
(どうしよう…なぜこんな時に…?触れてほしい…愛してほしい…今すぐ)
救いを求めるような気持ちで見つめ続ける。
けれど三成はこちらを見てはくれない。
「…はぁっ…はぁっ…」