第33章 歪んだ愛で抱かれる 後編 【三成】R18/ヤンデレ
「ありがとう…。蘭丸くんのおかげで何だか心が軽くなった。今一番、かけて欲しかった言葉だったのかも」
「えー、ほんとにー?それは良かった。俺、すごくない?」
蘭丸はいつものアイドルのような明るい笑顔を見せた。
「名無し様のその強さ、尊重して守りたいって思うよ。前にも言ったけどね」
「ありがとう…」
自然と名無しも微笑んだ。
蘭丸が消えていった闇を見つめしばらく考えこんでいた名無し。
はっと我に返って、
「お願い、どうかこの事は三成くんには言わないで」
かやに懇願する。
侵入したことを知ったら激昂し、蘭丸を捕らえて今度こそ殺そうとするかもしれない。
「……!!…」
かやは口を開いて驚愕の表情を浮かべている。
その視線の先は名無しを通り越してその後ろ、部屋の入口へ。
おそるおそる振り向くと、そこには三成の姿があった。
「三成くん!」
留守のはずなのになぜ?
蘭丸の侵入を知られてしまった?
怯えながら様子をうかがうと、彼の瞳に宿る光はなぜかいつもより弱く、握りしめた拳は僅かに震えている。
不思議に思って見つめる名無しの視線を遮るように、三成は広げた片手で両目から額にかけて覆った。
「三成…くん?…」
「…ほとほと嫌になる…愚かで浅ましい自分…」
絞り出すような声は苦しげで小さい。
かやはいつの間にかその場を離れていた。
「蘭丸さんは…名無し様の欲しい言葉を…かけてあげられるのですね」
蘭丸との会話を聞かれていた…
名無しの顔からサッと血の気が引くが、
三成はふらりと入口の壁に背をつけると、それをつたうように脱力して滑り落ち、片膝を立てたまま座りこんだ。
「彼は名無し様を助けた。そして守ろうとたった一人で戦っていた。今も、貴女の気持ちを尊重し、潔く身を引いた。貴女のことが好きなのに…。彼の愛は…何と崇高なのか」
両目を手で覆ったままなので表情はわからないが、その声は余裕がなくどんどん上ずっていく。