第33章 歪んだ愛で抱かれる 後編 【三成】R18/ヤンデレ
それから幾日か過ぎ…
三成は数日間の予定で遠国の視察に出ており、名無しは一人で過ごしていた。
ホッとする反面、彼の苛烈な愛と温もりが無い夜はひどく空虚にも感じる。
「名無し様、失礼してよろしいですか?今夜は冷えそうなので、もう一枚肌がけをお持ちしました」
扉の向こうから聞こえたかやの声。
「ありがとう、どうぞ」
返事をしたが、なぜかしばらく沈黙が下りる。
何となく様子がおかしい。
訝しんでいると、鍵の解錠音ののち扉が開いて、かやが部屋に入ってきたが…
「!!」
背後から彼女の喉元にクナイをつきつけている人物
闇に紛れる黒一色の装束をまとったその人は…。
「蘭丸くんっ…」
名無しは目を見開く。
(良かった!…生きてた…)
三成の襲撃を受けたとき、彼は奮闘していたが圧倒的な多勢に無勢の状況では到底持ちこたえられず、深手を負わされてしまった。
『お願い!やめて!私、三成くんの元に行くから…!彼を傷つけないでっ!!』
そう泣き叫びながら名無しは自ら捕らえられた。
その後の蘭丸の行方は三成に聞いてもわからず、ずっと気がかりだった。
蘭丸は名無しと目を合わせて頷くと、かやの喉元からクナイを下ろす。
ふらりとしゃがみこんだかやに、名無しは駆け寄った。
「大丈夫?」
「はい…」
いつも気丈な彼女だが、さすがに震えている。
「彼と少し話がしたいの」
かやが頷くのを見てから、名無しは立ち上がって蘭丸に向き直った。
「良かった、無事で。ごめんなさい、私のせいであんなに深い傷を…」
蘭丸は首を横に振った。
なんてスッキリとした表情をしているんだろう、
名無しはそう思った。
「ううん、こっちこそごめん。たくさん心配かけちゃったね」
彼はこれまでの事を語り始めた。
深手を負い捕えられた蘭丸は何とか隙をついて逃げ出したものの出血が多く、力尽きる寸前で顕如に救われた。
手厚い看病を受けて回復してきた頃、蘭丸を門徒たちに託した顕如は突然に姿を消してしまう。
「俺、熱を出してずっと意識なかったんだけど、うわ言でずっと顕如様に謝ってたみたいなんだ。ごめんなさい…ごめんなさい…俺は顕如様を裏切ってるって…それをずっと繰り返してたみたいで」