第33章 歪んだ愛で抱かれる 後編 【三成】R18/ヤンデレ
「名無し様、辛い思いをさせて心から申し訳なく思います」
「……」
「勿論、罪悪感はあったのです。他の男の元へ行かせるなど、苦しくて苦しくて、狂いそうなほど悔しかった!貴女を誰にも渡したくないのに、心を掴むために嫁がせる。こんな矛盾に心が引き裂かれそうだった…!」
顔を歪めながら悲痛な声で絞り出すように言った。
政略結婚の相手として白羽の矢を立てた川名泰俊は、奇しくも三成と正反対の性質を持つ若者。
筋骨隆々の恵まれた体格、天性の勘で武功を上げて将来を嘱望されていた武将。
裏表のない豪胆でさっぱりした人柄で男らしい魅力に溢れている。
自分にないものを兼ね備えた彼への劣等感から、三成は自らを痛めつけるような厳しい鍛錬を重ねた。
先程、名無しの前で泰俊を酷くこき下ろしてしまったのも妬みによるもの。
「だけど…情けないことに、それ以上の策が思い浮かばなかったのです、名無し様の心を掴むための策が…」
(確か…前にも同じようなことを…)
『あらゆる手立てを考えましたが、情けないことに軍師として政略結婚以上の策は浮かばなかった』
結ばれた夜に三成が言っていたこの言葉。
織田軍の危機を救うための政略結婚以上の策が浮かばなかった、という意味だと思っていたが、実はそうではなかったのだと名無しは思い当たる。
「ですが、策は概ね上手く運んだ」
三成は狡猾さの戻った声で言い、名無しの顎を指先でくいっと押し上げ、顔を上げさせる。
そして彼女の肩を引き寄せ、震えている唇に口づけを落とした。
咄嗟のことで力の入っていない口内に舌を差し込ませ、いきなり探り始める。
舌を絡めとり、吸い上げ、歯を順番になぞって…
「…ふ…ぅん…」
名無しは身体に力が入らず、されるがまま。
抵抗できないどころか勝手に甘い声が漏れてしまう。
愛する人がしかけた罠、それに嵌った自分…
彼の告白への衝撃から、胸中は複雑どころか憤りまで感じているのに、強引な口づけはあまりに心地よくて…
抗えないどころか、自然と瞼を閉じて受け入れてしまっていた。
体の熱さ、疼き、呼吸と鼓動の乱れが急激に強くなっていく。
やがて唇が離れたときには、
「はぁっ…はぁっ…」
名無しは自らの体も感覚も感情も、まったく制御できなくなっていた。