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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第32章 歪んだ愛で抱かれる 中編


「かやと申します。名無し様、誠心誠意お仕えさせていただきます」

彼女を目の輝きにも、はきはきとした話し方にも聡明さが表れており、三成の言った通りの人だと思った。

年が同じですぐに打ち解けることができ、語り合うほどに人柄の良さを感じる。

彼女が仕えていたのは、姑の実家よりもずっと高位な公家の高原家。

公家の作法にこの上なく詳しく、決して出しゃばらずに名無しの振る舞いを正してくれたおかげで、姑や義妹からの意地悪な指摘は目に見えて減っていった。

また、見聞が広くあらゆることに知識があり、何か尋ねると打てば響くような答えが返ってくる。

そして何より、孤独な名無しの立場を理解して寄り添ってくれたので、大きく救われた。

感謝を伝えると、

「それは何よりのお言葉。私の任務は名無し様にとって一番幸せな環境へと導くことですから。三成さまより重々仰せつかっております」

かやはきっぱりとそう言った。

「三成くんが…」

『任務』『環境へ導く』『重々仰せつかる』

表現にどこか違和感を感じたが、それよりも三成の配慮が嬉しかった。

身勝手に逃げてきたのに、彼は幸せを願ってくれている…。

ずっと青白かった頬を赤く染め、嬉しさを隠しきれない名無しを、かやはやわらかく微笑みながら見つめた。







この頃は毎夜、促した通りに泰俊はずっと側室の部屋で過ごしていて、内心名無しはホッとしていた。

一人になれる唯一の時間。

その夜も三成との甘い追憶に浸ろうとしたが、突然邪魔が入った。

強い足音を立てながらやって来たのは泰俊。

「どうしました?」

「少しでいいから時間をくれないか」

「何でしょう?」

「利与(りよ)がどうしても名無しに会いたいといって聞かないんだ」

「……」

利与とは泰俊の側室。

会いたくないと拒否したまま顔を合わせずにきた。

名無しの感情はだいぶ落ち着いてきたとはいえ当然、気は進まない。

だけど何度も断るのもと思い了承した。

しずしずと俯きながら部屋に入りひれ伏した彼女。

床についた手は小刻みに震えている。


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