第32章 歪んだ愛で抱かれる 中編
予定よりずっと早い帰還に姑や義妹たちにさんざん嫌味を言われ、ようやく開放された名無し。
自分の部屋で一人になると昨日の夜のことが次々に思い出される。
側室の話に動揺したあげく、妙な気分になって自慰をしようとしたり、
さらに心配してくれた三成を前にしてタガが外れ、あろうことか愛されたいなどと言って縋ってしまったり…
(ああ…どうしてあんなことを…)
明らかにおかしかった自分の行動への羞恥で消えたくなる。
だけど…
『私でよければ…どうかまりあ様を愛させてください』
『寝ても覚めてもまりあ様のことが頭を離れません。好きで…好きで…たまらなくて…』
透明感のある美しい紫の瞳で真っ直ぐ見つめながら思いを伝えてくれた三成。
相思相愛が叶うなんて夢にも思わなかった。
名無しは目を閉じて、その言葉を宝物のように胸の中で繰り返してみる。
『名無し様はすべてが美しく、愛らしいのですね』
耳元で熱っぽく囁きながら、大きな手で優しく触れてくれた。
進んでいく行為に躊躇って、思わず制止しようとした手は彼の手に捕らわれて封じられてしまった。
『きれいです。ますます興奮する』
『大人しくしててください。もっとよくしてあげますから』
『気持ちよさそうですね。そのまま何も考えず、ただ感じていればいいのですよ』
彼らしくないそんな言葉とともに、奪われるように愛撫され続けたら、本当に気持ちよすぎて何も考えられなくなってしまった。
危険な雄の色気をまとい、強引に名無しを快楽の淵へと追いこんでいく様子は、普段の天使のような彼からは全く想像できないもの。
(三成くん…あんな一面があったなんて…)
ドクン…ドクン…
思い出すと鼓動が大きくなる。
甘美で背徳的な夜の余韻が大きく膨らんでいき、あの時のように下腹部がゾクゾクしてくる。
大好きな人に愛で抱かれたい…
その望みが叶って、頭の中が真っ白になるほどの快楽に全身を貫かれた。