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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第32章 歪んだ愛で抱かれる 中編


安土城に里帰りして、わずか1日での名無しのとんぼ返り。

ちょうど偵察任務から帰ったばかりの蘭丸が快く護衛を引き受けてくれた。

「名無し、本当に帰っちゃうのか?」

「うん…ごめんね、秀吉さん」

「くれぐれも無理はするなよ。俺たちに心配かけたら申し訳ないとか絶対に思うな。何でも言ってくれ」

「ありがとう」

いつまでも心配そうな秀吉に、

(過保護だな、お兄ちゃん)

思わずふっと笑ってしまう。

重々お礼を言い、別れの言葉を交わして輿に乗り込もうとすると、

「ねえねえ」

蘭丸に呼び止められた。

振り向くと、

「!!」

突然、頬に当てられたふわふわした感触に名無しは驚く。

「びっくりした?」

いたずらっ子のように笑う蘭丸が手にしていたのは、金色の産毛に包まれた桃。

「びっくりしたよ!すごく大きくて綺麗な桃だね」

「そう、俺が一番好きで特別な果物。これ、あげるよ」

「いいの?ありがとう」

「触っただけでも癒やされない?」

名無しは桃を両手で包み、丸い形に沿って指でそっと撫でてみる。

それはまるで赤ちゃんの肌みたいに滑らかで心地よい手触り。

ふんわりと甘い香りも立ち上り、鼻腔をくすぐる。

「ホントだ…。形も触り心地も香りも…癒やされる」

「でしょ!良かったら移動中に癒やされてね。で、後で食べて。最高品種だからすっごく甘いよ」

蘭丸は笑顔を輝かせた。

出発してからも、珍しい小動物がいたり、景色が美しい場所を通るときは

「名無し様、見て見て!」

と、たびたび声をかける。

まるで行楽のように楽しそうな様子だったが、実は周囲に不審な様子は無いか、名無しの体調、天候の変化など、多方面に意識を張り巡らせながら護衛の任務を全うしていた。
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