第31章 歪んだ愛で抱かれる 前編 【三成】R18
「……そうですか。何か私にできることはありませんか?」
(この落ち着かない感じ、どうしたら治る?)
「…の…喉が乾いて…お水がほしくて」
「わかりました。少しお待ちくださいね」
部屋を出た三成は、やがて舶来品のガラスの水さしと杯を手に戻った。
注いでもらった水を口にすると何だか甘く感じる。
そのうるおいと冷たさが乾いた体に染みわたっていき心地よさをもたらしたが、それは一瞬に過ぎなかった。
「どうもありがとう…もう…だいじょうぶ…」
(どうしよう…全然おさまらない…むしろ…)
「では、しばらくお部屋の外に控えています。何かあればすぐ呼んでくださいね」
そう言って部屋を出た三成だったが、気になって振り返ると床に手をついて倒れこんだ名無しの姿が目に飛び込んだ。
慌てて駆け寄り抱き起こす。
「名無し様!」
「はぁ…はぁ…」
水を飲んでもおさまるどころか、体の熱さや疼き、呼吸や鼓動の乱れはさらに強くなり、もう限界だった。
「大丈夫ですか?!」
「…助けて…体が熱い…」
「…すぐに医者に!…」
ずっと好きだった彼の紫水晶のような美しい瞳に見つめられて、
大きな手で肩を抱かれて…。
名無しはもう強くなる願望を隠しきれなかった。
「お願い、抱きしめて!」
「!!…名無し様?…」
「三成くんに強く抱きしめてほしいの…!」
「……」
「お願いっっ…!!」
次の瞬間、名無しの体はぐいっと引き寄せられ三成の胸に受けとめられた。
「…あっ…」
体の中で何かが弾け飛んだような感覚。
名無しも両腕を三成の背中に回してすがりつく。
「ねえ、苦しいの。体が熱くて落ち着かない…哀しいし…虚しいっ!…。私、愛されたい!…」
もう自分でも何を言っているのかわからない。
湧き上がる衝動に突き動かされて、名無しはひたすら胸の内を吐き出した。
「名無し様…」
三成は名無しの肩をそっと掴んで体を離すと、
「私はずっと、貴女に恋い焦がれていました」
真っ直ぐに見つめながら言った。