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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第30章 五色の夜 春日山城編5 【信玄】


「…ごめんなさい。急にあらわれたり消えたりして…」

信玄さまは微笑みながら首を横に振る。

「急にあらわれた君は言ってることも妙で、かなり怪しかった。だけど、もののけにしては随分可愛くて、助けたいって思ったよ」

「助けてくれてありがとうございました…。あの怖いお父さまに怒られても守ってくれた…」

しゃくりあげた私を優しいまなざしが包む。

「不思議な君と出会って、一緒に越後に行こうと決めたとき、心からワクワクしたんだ。これまで感じたことがない位に。二人でいい景色を見て、食事をして、普通の少年のように過ごしたかった。今日は、それがようやく叶って感慨深かったよ」

ハルはそんな風に思っていたなんて、

今日の信玄さまは、そんなことを思いながら過ごしていたなんて、

あんなにも楽しそうな様子でいてくれて…

そう思ったらさらに涙が出た。

「どうしてもまた会いたくて、君との思い出は大切にしていたけれど、武将として苦しい日々を重ねて年月が経ち、自分でも信じられないが君との記憶が抜け落ちてしまっていたんだ。いつのまにか心を無くしていた」

「はい…」

先ほど見てきた信玄さまの壮絶な苦悩の日々が頭に浮かぶ。

「だけど、越後を目指したことだけは何となく記憶の片隅に残っていた。死んだと偽り春日山城に身を寄せることを決めて、なぜだか念願が叶ったと感じたんだ」

「…」

「ここでは、ありがたいことに皆が慕ってくれている。幸や兼続たちの成長を間近で見ることができて、次第に無くしていた心を取り戻せた。君の導きで、越後に来れて良かったよ。今までは常に皆を守る立場でいなければと思っていたけど、ここでは守られている気がするんだ」

穏やかな信玄さまの表情や声に、私の心も晴れて凪いでいく。

「そして君が来てくれて、思い出したんだ。また会えて本当に嬉しいよ。ありがとう」

「…私も会えて良かった。美しいです、信玄さまの生き方が。尊敬してます」

胸がいっぱいになって上手く言葉が出てこない。
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