第30章 五色の夜 春日山城編5 【信玄】
「時をかけて、すべてを見てきた天女にそう言ってもらえるなら、俺の人生捨てたもんじゃないな」
思いをこめながらゆっくりと頷いたら、目に溜まってた涙が零れ落ち視界がはっきりしてくる。
見上げると、
空の東半分が朝焼けで燃えるように赤く染まっていて、そこに銀色の細かな雲がいっぱい散らばっていた。
やがて太陽が登るにつれ、空の赤味も雲も溶けていくように白い陽光にのまれていく。
なんて美しいんだろう。
時空をこえて、ハルと、信玄さまと過ごした長い夜が明けていった。
そして新しい朝が始まる。
終